破産について

弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所の
破産についてご覧下さい

自己破産について

自己破産とは、借金を返せなくなったときに、一定の財産を債権者たちに平等に分配する一方、「免責」を受けることで、借金を全額免除にしてもらう手続きです。

同時廃止について

(1)同時廃止とは

自己破産をする場合、自分が住んでいる地域を管轄している地方裁判所に、債務者自身が破産手続開始・免責許可を申立てることになりますが、破産手続きの申立てをする際に、同時に免責許可の申立てもしているものとみなされます。
そして、裁判所が、申立てに対して、財産の全てをお金に換えても換価や分配のための費用にもならないと判断した場合には、同時廃止という簡単な手続きでよいとして、破産手続きの開始決定がなされると同時に手続きが終了します。
同時廃止とは、簡単にいうと裁判所が書類の審査だけで、債務者には財産がないということを判断する簡単な手続きです。一方、同時廃止とならなかった場合の手続きは、管財事件といいますが、管財事件については後述いたします。

(2)自己破産手続とは

自己破産手続とは、財産を売却してお金に換えて、破産申立人の債権者へ平等に配当する手続きをいいます。そのため、破産手続きだけでは、借金は0にはなりません。

(3)免責決定とは

上述したとおり、破産事件では、破産手続の開始が決定しただけでは借金はなくならず、「免責決定」があって初めて借金が全額免除となります。つまり、免責とは、借金を0にすることを言います。
免責決定は、必ずなされるものではありません。
(7)に記載した通り、わざと財産を隠したりして債権者を害するような行為をしたり、裁判所に対して虚偽報告をしたりした場合など、免責不許可事由が存在する場合には、免責決定が出ないことがあります。
しかし、注意していただきたいのは、免責不許可事由はかならず免責されないというものではなく、しっかりと裁判所に対して反省の意思を示すことで、裁量的に免責される余地は十分に存在します。
なお、破産決定がなされと、債務者は、会社の代表者になれない等の資格制限が生じますが、免責決定がなされることによってその制限から復権します。

(4)支払能力の有無について

支払不能の場合に、免責決定までなされます。つまり、支払不能の状態にない場合には、免責決定はなされません。そこで、支払不能と言えるかどうかは、借金の総額、申立人(債務者)の職業、収入、財産、信用、技能、年齢、性格等を考慮して総合的に判断されることになります。支払不能の場合、免責が認められませんので、安易に自己判断するのではなく、弁護士等専門家にご相談ください。

(5)免責審尋について

同時廃止の場合、基本的には免責審尋の1回だけ裁判所に行けば足ります。
免責審尋とは、裁判官が、債務者を免責するかどうか判断するために、裁判官から申立人に対して直接聞き取りが行われる機会です。そして、免責審尋は、債務者に免責不許可事由(例えば、ギャンブル、浪費、投資、偏波弁済、財産隠し等免責を許可すべきでないとされている事由)がある場合に開かれます。
後述しますが、免責不許可事由がある場合には、裁判官の裁量で免責決定を出してもらわないと免責を受けられません。
※ただし、免責審尋を原則的に行わない地域もありますので、詳しくはご相談の際にご確認ください。

(6)必要書類について

債権者一覧表、住民票、給与明細、源泉徴収票、課税証明書、預貯金通帳は申立時に最低限必要となってきます。
事案によって必要書類は異なりますので、その点についても詳しくご説明させていただきます。

(7)免責不許可事由について

上述のとおり、自己破産決定がなされただけでは、債務は0とはなりません。免責決定が出て初めて債務が0となります。しかし、法律上、いかなる場合にも免責がなされるとは規定されておらず、下記の通りの免責不許可事由が定められています。

免責不許可事由
  1. 不当な破産財団価値減少行為
  2. 不当な債務負担行為
  3. 不当な偏波行為
  4. 浪費又は賭博その他の射幸行為
  5. 詐術による信用取引
  6. 業務帳簿隠滅行為等の行為
  7. 虚偽の債権者名簿提出行為
  8. 調査協力義務違反行為
  9. 管財業務妨害行為
  10. 7年以内の免責取得等
  11. 破産法上の義務違反行為

ただし、免責不許可事由がある場合であっても、裁判官の裁量で免責決定が出される場合があります。
そのため、ギャンブルで借金を作ってしまった場合であっても、免責決定が出る可能性は十分にありますので、ご相談前に諦める必要はありません。

(8)期間

同時廃止の場合、申立から手続きが終了するまでに、3か月程度かかります。
   

管財事件について

(1)同時廃止と管財事件の区別について

個人の自己破産申立事件については、次のような場合には管財事件として取り扱われる可能性が高くなります。
管財事件として取り扱われる可能性の高い事件類型

  1. 33万円以上の現金がある場合
    ※地域によって基準額に差異があります
  2. 20万円以上の換価対象資産(預貯金、保険、債権、自動車等)がある場合。資産類型ごとに20万円以上かが基準となります。
    ※退職金の場合はその8分の1相当額(退職済の場合は4分の1相当額)
  3. 不動産を保有している場合
  4. 資産調査が必要な場合
    自営業者の場合、資産調査が必要とされやすい
    ①、②の資産を有していないことが明白でないとき管財事件とされる。
  5. 法人依存型の場合
    法人代表者は、法人破産と合わせて管財事件として扱われます
  6. 免責調査が相当な場合
    免責不許可事由の存在が明らかで、かつその程度も軽微と言えない場合、財人による免責調査を経るのが相当と判断されます。

(2)管財事件とは

同時廃止とならなかった場合、管財事件となります。例えば、財産を持つ債務者が、借金を全て返せないと判断して破産申立をする場合、同時廃止とはなりません。
そして、この場合、破産申立がなされると、まず裁判所が破産管財人を選定して、どのような財産を債務者が保有しいているのか調査します。その後、債権者集会にて申立債務者に対する債権を確定し、現金化した財産を債権者の債権額に応じて分配します。

(3)予納金

管財事件になると、裁判所が債務者の財産等について調査を嘱託する破産管財人が選任されます。そして、破産管財人に対して、債務者は、予納金(20万円~)を入金しなければなりません。

(4)破産管財人による財産調査

破産管財人は申立人の財産を調査したり、配当対象となる財産を売却したりします。これに対して、債務者は、破産管財人の職務遂行に協力する義務があり、免責を得るためにも破産管財人に対して協力する必要があります。

(5)債権者集会及び免責審尋

管財事件の場合、債権者に対して債務者の財産状況を説明する債権者集会が開催されます。
また、債権者集会後、裁判所は、管財人や債権者に免責を認めるかの意見を求めます。これを免責審尋といいます。

(6)配当

配当可能な財産が、債権者に対して配当されます。
ない場合には、破産手続きが終了します。

(7)免責許可決定

免責許可がされてから2週間以内に債権者から異議がなければ免責が確定します。

(8)郵便物

管財事件として、破産管財人が選定されると、債務者に届く郵便物は全て破産管財人のもとへ送られることになります。

(9)期間

管財事件の場合、申立から手続きが終了するまでに、早くて3か月、長ければ1年位かかる場合もあります。

財産の取扱いについて

(1)生命保険について

積立型の生命保険の場合、解約したときに解約返戻金が債務者に対して支払われます。そして、解約返戻金の金額が金20万円以上となる場合、債務者は原則当該生命保険を解約しなければなりません。
もっとも、生命保険がどうしても必要な場合等は、解約返戻金相当額を用意することによって、当該生命保険の解約を回避することができます。

(2)住居について

債務者が所有する不動産については、たとえ居住していたとしても、破産の場合、換価しなければなりません。

(3)銀行口座について

銀行口座内にある預貯金は、一定額以上の場合、配当の対象になります。
銀行口座を保有することや、同様に新たな口座を開設することも可能です。
しかし、破産申立により、債務者の信用情報に傷がつくため、7年間キャッシング機能のついた預貯金口座は使えなくなります。

(4)自動車

自動車ローンが残っている場合、自動車の所有権は、所有権留保により信販会社にあることが多いため、自動車は信販会社に引き揚げられてしまう可能性が高いです。
一方、自動車ローンが残っていない場合には、自動車の価格が金20万円以上である場合には原則処分をしなければなりません。また、どうしても自動車を保持したい場合には、自動車の価格と同額を管財人に支払うことで保持できる場合があります。

(5)退職金

未受領の退職金については、債権として財産と扱われます。もっとも、そのすべてが取り立てられるわけではありません。福岡地方裁判所では、退職金債権は、原則として、その8分の7については差押えが禁止されていますので、退職金債権の8分の1が換価処分されることになり、管財人が会社から取り立てます。
もっとも、この場合、会社に破産をしたことがばれてしまいます。そこで、会社への発覚を回避するために、債務者は、管財人に対して退職金支給見込み額の8分の1相当額を支払うことで、会社への破産の発覚を防ぐことができます。

(6)株

有価証券の総額が一定額以上となった場合、換価し配当することになります。もっとも、非公開会社の場合、株価が公表されていません。そこで、この場合、非公開株の評価方法について管財人及び裁判所と慎重に協議し、その価格を算定します。また、譲渡禁止株式については既存株主に譲渡することになります。

(7)その他

福岡地方裁判所では、下記の動産等については換価処分しないとの基準が定められています。

換価等をしない財産
  1. 99万円までに満つるまでの現金
  2. 預貯金(残高合計が20万円以下である場合に限る)
  3. 保険契約解約返戻金(見込み額合計が金20万円以下である場合)
  4. 自動車(処分見込合計が20万円以下である場合)
    ※初度登録より5年経過自動車は原則価格を0とみなす。
  5. 居住用家屋の敷金等返還請求権
  6. 電話加入権
  7. 退職金債権のうち支給見込み額の8分の7相当
  8. 家財道具
  9. 差押え禁止動産又は債権

破産のデメリット

破産をしても、日常生活を送るうえでの不利益はほとんど存在しないものの、下記のようなデメリットがありますので、あらかじめ弁護士への確認が必要です。

(1)資格制限

破産をすることによって、弁護士や司法書士などの士業につけなくなります。また、生命保険募集人、建設業者、警備員等の職業にもつけなくなります。しかし、破産決定が出た後、免責決定が出れば、復権します。制限を受ける資格は以下のとおりとなります。

破産決定により資格制限を受ける職業資格
  1. 弁護士、公認会計士、弁理士、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、土地家屋調査士、及び商工会議所会員となる資格
  2. 後見人、保佐人、後見監督人、遺言執行者といった法律上他者の法律行為を補完すべき立場の者となる資格
  3. 信託の受託者、証券外務員、旅行業者、商品取引所会員、宅地建物取引主任者、中央卸売市場の卸売業者、減築業法に定める建設業者等他人の財産を管理し、取引を行う仕事に就く資格(但し、免責により復権した場合は、これらの制限はなくなる)

※④医師、看護師、教師は資格を失いません。

(2)7年間破産できなくなる

破産をすると、7年間は再度の破産ができなくなります。

(3)借金ができなくなる

破産をすることによって、その旨が信用情報として記録されます。そのため、銀行、クレジット会社から一定期間借金をすることができなくなります。

(4)第三者にバレてしまう危険性

破産をすると、「官報」という政府機関紙に掲載されます。行政の破産者名簿に登載されますが、勝手に見られるものではなく、免責決定が出れば削除されます。そのため、破産の事実が友人等第三者に発覚する可能性は非常に低いです。
また、退職金額の証明書が必要な場合や、財産関係、家計収支の状況を資料として提出する必要となる場合があるため、会社や家族に知れてしまう可能性も、潜在的には存在しています。

(5)免責の対象にならない債務がある

原則、免責決定により債務は0となります。しかし、下記の事項については、免責の対象から外れますのでご注意下さい。

免責の対象から外れる債務
  1. 租税等の請求金額
  2. 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
  3. 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
  4. 婚姻費用の分担・子の監護・不要等に関する義務にかかる請求権
  5. 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
  6. 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(但し、債権者が破産開始の決定につき悪意であった場合を除く)
  7. 罰金等の請求権

破産が認められなかった場合

免責が認められなかった場合、免責を諦めて任意整理に方向転換することも有効な債務整理の手段の一つとなります。

よくある質問

(1)自己破産する場合、家族にはどのような影響が及びますか?

債務者の家族が保証人になっていない場合には、家族が自己破産の影響を受けることはありません。一方、家族が保証人となっている場合には、家族の保証債務は免除されず、家族に請求がいきます。
もっとも、保証人に迷惑をかけたくないからといって、自己破産を躊躇っても根本的な解決には至りません。ましてや、保証人に迷惑をかけないために、偏波弁済をしてしまった場合、本来同時廃止となる事件が管財事件となってしまい、更に偏波弁済した額について別途用意しなければならなくなる危険があります。そのため、この場合には、保証人の方も連れて一度事務所にお越しいただければと存じます。

(2)自己破産した場合、家の中の家財道具は全て持っていかれますか?

破産の場合、不動産等財産的価値の高いものについては、換価され債権者に配当されます。一方、家電製品であっても、テレビ、洗濯機、冷蔵庫等の家財道具は、債務者の必要最低限の生活に必要なものとして差し押さえが禁止されています。そのため、これらの家財道具については、持っていかれることはありません。

(3)自己破産を1度経験しているのですが、2回目の自己破産は認められませんか?

免責決定を1度受けてから7年を経過していれば、もう一度免責決定を受けることができる可能性があります。
逆にいうと、7年を経過していない場合には、原則再度の免責決定を受けることはありません。しかし、もう一度破産に至った経緯等によっては、裁判所が、例外的に、裁量で免責を許可する場合があります。
そのため、一度自己破産を経験しているからとあきらめず、一度ご相談下さい。

(4)家族にバレないように破産はできますか?

不可能ではありません。しかし、同居家族の収入資料等を裁判所に提出しなければならないため、実質的に家族に内緒で破産を申し立てることは難しいです。
家族には正直話すことが大事になります。もしおひとりで家族に破産をすることを言えない場合には、破産に対する偏見の除去など当事務所がご協力いたします。

(5)自己破産すると会社をクビになったりしますか?

会社は、自己破産を理由に従業員を解雇することはできません。

弁護士よりひとこと

確かに「破産」という言葉に拒否反応を持っている人は多くいます。これは、破産手続きを用いることによって、債務者は、自己の負担すべき債務を免れることができる制度について、律儀な日本人の性格と親和していないからです。しかし、破産手続きは、債務をリセットして、債務者に人生の再スタートのチャンスです。借金に苦労して、夜逃げや、自殺等悲惨な結末となることも聞きますが、破産して人生をやり直す機会を法律が保証しているのです。
まずは破産がどのようなものか知ることが大事になりますので、借金に苦しんでいる場合、一度事務所にご連絡下さい。